AIも結局、人だった

仕事で、ある自治体系の大規模観光サイトのAIアクセスを見ている。

AIのアクセスログというと、無機質なクロールの山を想像すると思う。そんなもの見て意味があるのか?と思われる方もいるだろう。

実際そういうものも大量にある。でも、それとは明らかに違う動きが混じっている。

AIが旅程を組みに来る

エリアのページを取り、そのエリアのスポットを何件か取り、アクセス方法のページを取り、最後に宿のページを取る。この並びが短時間に、ひとかたまりで来る。

これは旅程を組んでいる。組んでいるのはAIだが、組ませているのは人だ。

「◯◯に2泊で行きたい、プラン作って」と誰かがAIに頼んだ。AIはそれに応えるために、この観光サイトに情報を取りに来た。ログに残っているのはAIの取得だが、その背後にいるのは旅行を考えている一人の人間である。

これに関しては、事実、テレビの午前中に放送している情報番組のお盆特集で、お盆休みの計画をAIに相談したという家族のインタビューがあった。

これを「ボットのアクセス」と呼んで人間のPVから除外してしまうと、旅行を考えていた人を1人分、計測から消したことになる。

消しているのは一番きれいなデータ

人が自分で旅程を組むと、その動きはGAの中で何日にも、何セッションにも散らばる。別のサイトと見比べ、翌日また戻り、宿だけ別のタブで見る。経路レポートを眺めても「エリア→スポット→アクセス→宿」という形には束になりづらい。

AIに組ませると、同じ旅程が数秒の一括取得として、そのままの形でログに残る。人が数日かけて散らばらせていた「必要なページの集合」が、1回の並びで丸ごと出てくる。

AIのアクセスは、時に人の行動よりも、人の意図をはっきり映す。

AIのアクセスは二種類ある

ひとつは人の意思が入っていないもの。学習用のクロールがこれで、ページを丸ごと持っていくだけ。誰かが今そのページを必要としたわけではない。

もうひとつは人の意思が入っているもの。人がAIに聞いて、AIがその答えを作るために取りに来た。さっきの旅程はこちら。人が「今これを必要とした」からAIが動いた。主語は人だ。

意思の入った側は、さらに二つに分かれる

ひとつは、人が「ここと、ここと、ここに行きたい」と場所を並べて、AIがそのページを一つずつ取りに来るもの。取られるのはスポットや施設の詳細ページで、並びがそのまま行きたい場所の一覧になっている。人が挙げた候補をAIが順に確かめていて、ログの上ではスケジュールを組んでいるように見える。

もうひとつは、人が具体的な場所を指定していないのに、AIが「この人にはまずこれが要る」と見込んで取りに来るもの。取られるのはプラン例やエリアガイドのような、面としてまとまったページだ。質問者は「2泊で行きたい」としか言っていない。それでもAIは、旅程の土台にはモデルコースが要ると判断して、面を先に取りに来た。

指示型は詳細を、先回り型は面を取る。人が自分でブラウザを開いていた頃は、エリアガイドで面をつかみ、気になった場所の詳細を開く、という順で何日もかけていた回遊だった。その回遊が、AIの側に移った。

そしてどちらも、人より深い。人は面をつかむと言っても、エリアガイドを1本読んで、詳細ページを3つか4つ開いて、そこで決める。AIは違う。関係しそうなページをほぼ網羅して取り、その中から質問者の問いに一番合ったものを選んで引用する。読まれなかったページは存在しなかったのではなく、読まれた上で選ばれなかった。

これは人の回遊では起きなかったことだ。人は目に入った範囲で決めるので、サイトの奥にある良いページは存在しないのと同じだった。AIは奥まで読む。サイトの全体が、質問1つごとに評価されている。

皆さんも、旅行から帰ってきてから、ここも行けばよかったってのを見つけてしまったりしませんか?リサーチ不足だったって凹むこと。

先回り型は一見AIの判断に見える。だが「この人には要る」の「この人」は質問者で、AIは質問者の必要を代わりに読んだだけだ。指示型も先回り型も、動いた理由は人の側にある。主語は変わらない。

だから、意思の入ったAIのアクセスは、結局は人のアクセスとして数えるべきものになる。

「誰が」ではなく「何を必要としたか」

ただし、従来の「誰が来たか」の分析はできない。AIが代理で来ている以上、地域も、デバイスも、流入元も、来訪者のものではない。従来の見方はそのままでは使えない。

代わりに数えられるのは「人が何を必要としたか」だ。

人がAIを使ってそのページを必要とした数と、人が自分でブラウザを開いてそのページを見た数。この二つを並べると、同じページを、人が手段を変えて見に来ている、という景色になる。AI対人間ではなく、人対人の手段比較である。

この比較には、もうひとつ読めるものがある。どのページを人はAIに任せ、どのページは自分で見に来るのか。旅程を組む段階の情報はAIに任され、決めたあとの確認は自分で見に来る、というように、ページごとに手段の比率が違う。それはそのページが人にとって「調べるもの」なのか「確かめるもの」なのかの違いで、サイトの側からは今まで見えなかったものだ。

この観光サイトでは、人の意思が入ったAIのアクセスが、人が自分で見に来たGAの数値を超え始めている。

クロールは減り、代理は増える

意思の入っていないクロールは、これから減っていく。学習に必要なものは取り終わるし、AIはこれから人の隣に置かれて、人の代わりに動くものになる。今すでに、旅程を組む人はブラウザを開く前にAIに聞いている。

残るのは、人が動かしているAIのアクセスだけになる。AIのアクセスを見るということは、この先、人のアクセスを見るということと同じになっていく。

サイトにAIが来ていますか、という問いは、実はこう言い換えられる。

あなたのサイトは、AIに頼んだ人にまで、ちゃんと届いていますか。