Google Analytics をはじめ、いま私たちの周りには膨大なデータがあふれている。
PV、直帰率、平均エンゲージメント時間、イベント数、スクロール深度……。
だが、これらはすべて「事実」であって、「意味」ではない。
どれほど最先端の AI が分析レポートを生成できても、
数字そのものから意味が湧き上がってくることはない。
意味は、常に人間側が与えるものだ。
前回の記事
「あなたのサイトの目的は? ― AIを困らせないための設計学 #1」
では、“意図のないサイト”は人間とAIを迷わせるという話をした。
今回のテーマはその続きである。
意図を与えたはずのサイトであっても、
数字を読む側が “意図ではなく表面の変化だけ” を追ってしまえば、
結局AIと同じ迷路に入ってしまう。
数字は、ユーザーの気持ちを語らない。
ユーザーの“気持ち”を読み解けるのは、
データでもAIでもなく 人間の想像力 だけだ。
分析で見ているのは、無機質なログ時系列ではない。
そこに刻まれているのは、1人ひとりのユーザーの “決断” の連続である。
そのページを開いたのはなぜか
スクロールするという行動に至った理由は何か
離脱した瞬間、心の中で何が起きていたのか
再訪したユーザーは、何を求めて戻ってきたのか
これらはすべて “心の動き” であり、
サイト運営者が本来向き合うべきものはここにある。
PVの増減は“集客”ではなく、
その裏側には「期待」という感情がある。
直帰率の高さは“悪さ”ではなく、
そこには「想定と結果の不一致」がある。
CV数の増減は“ビジネス結果”ではなく、
その前には「決断のための納得プロセス」がある。
行動データとは、ユーザーの物語の断片である。
良い分析は、正しい計算でも、整った表でも、深いモデルでもない。
良い分析とは、ユーザーの行動から
「この人は何を考えていたのだろう?」
と問うところから始まる。
分析とは “観察” であり、
“仮説” であり、
“物語の再構築” である。
ユーザーがどこから来たかは “物語の始まり” である。
検索キーワードは、ユーザーの“言葉にならない欲求”そのものだ。
最初に着地したページは「期待の形」。
期待に合わなければ、行動は生まれない。
ページを多く移動したなら、それは迷いの連鎖である。
迷わせたのはサイトであり、意図の設計である。
コンバージョンは“YES”ではなく、
「確かにこれだ」
という納得の積み重ねでしかない。
分析とは、
数字を“人の動き”として読む技術である。
AIが進化すると、人間はもう分析しなくても良い——
そう考えているなら、それは誤解である。
AIが扱えるのはあくまで
“意味が取り出しやすいデータ構造” に限られる。
意図が曖昧なサイト、
構造が破綻しているデータ、
ノイズだらけのイベント計測。
これらはすべて AI にとって「意味を抽出できない材料」である。
つまりこれから必要になるのは、
正しい計測設計
正しいデータレイヤー
正しいコンバージョン定義
シンプルで文脈が一貫したサイト構造
これらを “AIが読み解ける形に整える技術” である。
ここにこそ
sGTM や CookieKeeper といった“計測基盤の正しさ”
が決定的な意味を持つ。
AI の精度は
基盤設計の思想に強く依存する時代に入っている。
実際の現場で頻発する“よくある誤読”をいくつか紹介したい。
どれも数字だけを見ていると必ず間違える。
実際には、
「求める答えがどこにもなく、彷徨っている」
というケースがある。
実際には、
「期待通りの答えが一瞬で得られて満足した」
という場合もある。
実際には、
「ユーザー層が変わっただけ」
というケースが非常に多い。
実際には
「検索意図の季節変動」や「社会状況」が原因
ということもある。
数字は“現象”であり、
“原因”や“意味”ではない。
原因は、常に人間側の文脈にある。
これからの分析の世界は、
AIと人間が明確に役割分担する世界になる。
事実の抽出
相関の発見
異常値の検知
パターン分類
レポートの自動生成
文脈の理解
意図の把握
心理の解釈
物語の再構築
計測思想の設計(≒AIの土台づくり)
そして重要なのは、
どれだけAIが進化しても「意味の解釈」と「設計」は人間に残る
ということである。
AI 時代の分析とは、
データを見て人間を想像する行為 である。
ユーザーは数字ではなく、
意図を持つ生きた存在である。
なぜその日その時間に検索したのか
なぜそのページに期待して来たのか
なぜそこで離脱したのか
なぜ、戻ってきたのか
なぜ、最終的に決断できたのか
行動の裏側には、必ず「理由」がある。
その理由に触れようとする姿勢こそが、
AI時代における分析者の価値になる。
そして、この価値は
AIがどれほど進化しても失われない。
次の記事では、
この“意図→行動→心理”の読み解きを
より構造的に扱い、
「AIが迷わない計測設計」 を深掘りしていきたい。