AHTGforEC(AI・Human・Traffic・Gap for EC)は、ECサイトに対するAI接触を「AIが薦めた商品」(search_rag)と「ユーザーが指名した商品」(user_trigger)という主語の異なる2つの観測に分け、それぞれを人間のページビュー(PV)と交差させて商品単位に配置する観測フレームワークである。
CVはバブルの大きさとして表され、位置の決定には関与しない。AI接触とCVを結ぶアトリビューション処理を持たず、各値は独立に計測されたまま提示される。EdgeShaping for Shopify に実装されている。
AHQG・AHTG のAI軸は「意図」である
AHTGforEC を理解するには、先行する AHQG・AHTG のAI軸が何を測っているかを押さえる必要がある。
AHQG および AHTG のAI軸は、検索.RAGとユーザートリガーを合算した値である。この合算は便宜ではない。両方とも、AIを経由して届いたユーザーの意図だからである。AIが回答を組み立てるために参照した場合も、ユーザーが直接URLを指定した場合も、その背後には「今それを知りたい」という人間の関心がある。主語はユーザーであり、AIは経路にすぎない。
だからこそAI軸は人間軸(AHQGは検索クリック数、AHTGはPV)と同じ土俵に乗る。
どちらも意図の到達量であり、差を取ることに意味が生まれる。学習専用と汎用クロールが軸から外れるのは、そこに個別の意図が乗っていないためである。
AHQG・AHTG のAI軸の正体は「AIアクセス数」ではなく「AIを介して届いた意図の量」である。
AHTGforEC は主語を変える
ECサイトでも、この読み方は成立する。
AIを経由して意図が届いたことに変わりはない。ただしECでは、同じデータに対してもう一つ別の見方が取れる。
AHTGforEC は同じ2カテゴリに対して、意識的に異なる主語を与える。
検索/RAG — AIが薦めた商品
AIが回答を生成する際に、その商品が参照されている状態。ここでの主語はAIである。数ある選択肢の中から、AIがその商品を選んで提示したという事実を示す。ユーザーの意図ではなく、AI側の判断の結果である。
ユーザートリガー — ユーザーが指名した商品
ユーザーがAIに対してその商品を名指しした状態。主語はユーザーである。商品はすでに認識されており、その上でAIに問い合わせが行われている。
「AIが薦めた」と「客が指名した」は、合算すれば1つの量になる。それ自体は誤りではない。ただし合算した数字からは、どちらが起きているのかが読めなくなる。
コンテンツサイトでは、この区別を持つ必要が薄い。AIが選ぼうがユーザーが名指ししようが、結果として「そのページが回答として消費された」ことに変わりはなく、合算しても失われるものは少ない。
ECでは失われるものが大きい。
ECにおいてAIは意図の経路であると同時に、商品を選ぶ主体でもある。何を薦めるかをAIが決めている状態と、客が商品名を出して指名した状態は、商業的に異なる意味を持つ。
どちらも施策の対象になりうるが、打つ手はまったく違う。したがって AHTGforEC は合算せず、2つを別々の観測として扱う。
軸の構成とバブル表現
AHTGforEC は商品単位に、学習 / 検索/RAG / ユーザートリガー の3カテゴリのAI接触数、PV、CVを計測し、うち2カテゴリをAI軸として2枚のバブルチャートを構成する。
| X軸(人間) | Y軸(AI) | バブルサイズ | |
|---|---|---|---|
| 検索/RAG × PV | PV | AIが薦めた回数 | CV |
| ユーザートリガー × PV | PV | ユーザーが指名した回数 | CV |
横方向が人間の到達、縦方向がAIの到達である。
AHTGforEC は2軸のバブルチャートであり、象限による分類を行わない。 AHQG・AHTG が中央値を閾値としてページを4象限に振り分けるのに対し、AHTGforEC は商品を座標上に置くところまでを担当する。
各チャートが示すのは、商品ごとのAI側の反応と、人間によるページ表示との対比である。両者が揃っているのか、どちらか一方に偏っているのか — その関係が座標上の位置として現れる。どの位置を重く見るべきかは商品や事業の性質によって変わるため、フレームワーク側では定めない。
CVは配置に一切関与しない。
座標を決めるのはAI軸とPV軸のみであり、CVは配置済みのプロットに重ねられる第3の表示次元である。CVの多寡によって位置が変わることはない。
学習専用は軸に使わない。学習データの収集は特定商品への到達ではなくカタログ全体の網羅的な取得として発生するため、商品単位で人間の到達と突き合わせても Gap として解釈できる差にならない。総量として別に観測する。
2枚は独立している
2枚のチャートは主語の異なる別々の観測であり、相互比較を意図しない。各チャートのAI軸はそれぞれ自身の最大値に合わせてスケールされるため、2枚を上下に並べて縦位置を見比べても意味を持たない。それぞれ単独で読む。
ユーザートリガーの符号は数値として存在しない
ユーザートリガーは一見、最も購買に近い指標である。ユーザー本人がその商品を名指ししているのだから、数字が大きいほど良いと読みたくなる。
しかし、名指しの理由は記録に残らない。
「これが欲しい」も「これと同等でもっと安いものはないか」も、同じ ユーザートリガー1件として、まったく同じように記録される。後者において、その商品は購買対象ではなく比較の基準点として機能している。ユーザーはその商品を軸にして、別の商品を買う。
つまりユーザートリガーが示すのは関心の量であって、選好ではない。
この符号は、計測の過程で失われたものではない。より細かく取れば復元できる種類の欠損でもない。最初から量として存在しない。
符号を判定するには、その商品が品揃えの中でどういう位置にあるか、価格帯として上か下か、意図的にアンカーとして置いている商品なのか、季節性はあるか、粗利はどうか — といった知識が要る。
これらはアクセスログにもEC側の購買データにも存在せず、事業者の中にしかない。したがって外部の観測者は、それが人間であれAIであれ、原理的に判定できない。
配置上は、ユーザートリガーが高くCVが小さいという状態が、認識されているのに選ばれていない可能性を示唆する。ただし示唆であって確定ではない。単に来訪動線の問題かもしれず、高額で購入頻度が低い商材かもしれない。
なぜアトリビューションを採らないのか
EC文脈では、「AI接触がCVにどれだけ寄与したか」を測定したいという要求が自然に発生する。AHTGforEC はこれを採用しない。理由は三層に分かれる。
第一に、同定できない。 ボットのリクエストはCookieもセッションも持たない。AI接触と、その後に発生した購買を、同一の人物として結びつける手段が存在しない。推定の当否以前に、対応づけの手がかりが無い。
第二に、推定できない。 参照された情報がどの回答に組み込まれ、その回答を読んだ人間がどの経路で来訪し、何を経て購入に至ったのか — この連鎖のどの段階も、サイト側からは観測できない。観測できない区間をまたいで寄与度を計算すれば、出力されるのは推定値ではなく創作物になる。
第三に、計算に入れる対象が存在しない。 前節のとおり、ユーザートリガーの符号は量ではない。符号を持たない値に係数を掛ければ、比較材料として名指しされている商品は「AI接触が多いのにCVに繋がらない不振商品」として出力される。数字は正しく、結論は間違っている。実際にはその商品は、他の商品の購買を成立させるアンカーとして機能しているのかもしれない。
CVを軸にも係数にも用いず、バブルサイズという表示にとどめているのは、この三層の帰結である。
AHTG / AHQG との関係
| AI軸 | AI軸の主語 | 人間軸 | 第3次元 | 分類 | |
|---|---|---|---|---|---|
| AHQG | 検索/RAG+ ユーザートリガー(合算) | ユーザー(AIは経路) | 検索クエリのクリック数 | なし | 中央値による4象限 |
| AHTG | 検索/RAG+ ユーザートリガー(合算) | ユーザー(AIは経路) | ページビュー | なし | 中央値による4象限 |
| AHTGforEC | 検索/RAG / ユーザートリガー(分離) | AI / ユーザー | ページビュー | CV(バブルサイズ) | 分類なし(2軸配置) |
AHQG と AHTG は同一の4象限構造とAI軸を持ち、人間軸の取り方だけが異なる。
AHQG は検索クエリという「意図が言語化された到達」を人間軸に置き、AHTG は経路を問わないトラフィック全体を人間軸に置く。
AHTG がすべてのトラフィックを対象とするのに対し、AHQG は検索・クエリ型のアクセスに絞り込んだ関係にある。
AHTGforEC が両者と分かれるのは、人間軸ではなくAI軸の解釈においてである。同じボットカテゴリを、サイトの性質に応じて異なる主語で読む — これが AHTGforEC を変種ではなく別のフレームワークたらしめている点である。
AHQG は Shopify 版には実装されていない。
ただしこれは、AHQG が EC に適さないという意味ではない。検索クエリのクリック数を人間軸に置く見方は、ECサイトでも成立する。
ECでまず必要とされたのが購買に寄った観測 — 商品単位で、CVを含む形 — であったため、AHTGforEC を構成した。両者は排他ではなく、併存しうる。
AHTGforEC は AHQG を EC 向けに移植したものではなく、別に構成されたフレームワークである。
何が読み取れるか
以下は解釈の型であり、対応策の推奨ではない。
検索/RAG × PV の左上
AIが回答の材料として参照しているが、人間が来ていない。AIの回答では、参照されたという事実は観測できるが、その回答の中で商品がどう扱われたかは観測できない。
候補の一つとして触れられただけで推薦としての強さが足りていないのか、AI側の商品理解がずれていて本来マッチしないクエリに引かれているのか — この二つは配置からは区別できない。前者は露出の量の問題、後者は商品情報の記述の問題であり、打つ手は異なる。
検索/RAG × PV の右下
人間は来ているが、AIが薦めていない。AIが品揃えの中からその商品を選んでいない状態であり、AI経由の購買行動が拡大した場合に最初に失われる位置にある。バブルが大きい(売れている)場合、影響は大きい。
ユーザートリガー × PV の左上
ユーザーが商品を認識してAIに問い合わせているが、来訪に至っていない。AIの回答で用が足りた(価格や仕様を確認して終わった)可能性もあれば、比較材料として参照されただけの可能性もある。この名指しが購買意図によるものか比較目的かは、配置からは判別できない。
ユーザートリガー × PV の右上でバブルが小さい
認識され、来訪もあるが、購入されていない。比較材料化している可能性がある位置だが、確定はできない。
AHTGforEC、AHTG、AHQG、ReverseHallucination は mare interno LLC が提唱する概念である。