コラム

GA4と広告の数字が合わないのは、ズレてるからじゃない。 ― 広告は「送り出した成果」、GAは「受け取った後の行動結果」 ―

作成者: 内海賢一|2025/11/03 23:00:00

1. 広告とGA、数字が合わない問題

「広告では100件取れているのに、GAだと80件しか出ていないんですが?」

このやり取り、どこの現場でも聞こえてきます。
広告担当者は「GAが正確じゃない」と言い、
分析担当者は「広告が大げさなんだ」と思う。
でも実は、どちらも正しい。

なぜなら──
そもそも、見ている母集団が違うからです。

 

2. 入口でのズレ:送出と流入の定義が違う

まず、広告とGAでは“入口”の数え方が違います。

  • 広告は「どれだけの人を送り出したか」=クリックを基準に数える

  • GAは「実際にサイトへ到達したか」=セッションを基準に数える

たとえば、クリックしたのにページが開く前に離脱したり、
ブラウザやITPの影響でタグが発火しなければ、
広告には記録されても、GAには記録されない。

この段階で、すでに「入り口のズレ」が発生します。

つまり、
広告は「招待した数」、
GAは「実際に来てくれた数」を見ている。
入口の母集団がそもそも違うんです。

 

3. 出口でのズレ:成果(CV)のつけ方が違う

さらに“出口”でも、ルールが違います。

  • 広告:一度でも広告経由で来ていれば、その後のCVも“広告の手柄”

  • GA:検索やSNSなど複数の経路を見て、“最も貢献した経路”に手柄を渡す

つまり、

広告は「勝因を采配で語る監督」、
GAは「勝因をチームに貢献した選手で語る監督」。

どちらも正しい。
ただ、見ている範囲と評価の基準が違うだけです。
(現場の監督が采配を語るのは当然ですよね。)

 

4. 入口と出口、二重のズレ構造

こうして整理してみると、
ズレには2つの段階があります。

ズレの段階 広告が見ているもの GAが見ているもの ズレの理由
入口 クリック(送り出した数) セッション(到達した数) 到達前の離脱・技術的制限
出口 広告経由ならすべて自分の成果 最も貢献した流入に手柄を渡す 帰属ルール・定義の違い

つまり、
「入口でもズレ、出口でもズレる」という構造そのものが、
数字の不一致を生み出しているわけです。

 

5. だから見るべきは「数字」ではなく「前提」

広告は「外へ働きかける活動」を評価し、
GAは「中で起きた行動」を観測します。

どちらが正しいかではなく、
どの視点で見ているかを明確にすることが大切です。

本当に揃えるべきなのは、
数字そのものではなく、
数字を導く前提(定義と範囲)です。

 

6. まとめ:数字を信じる前に、数字の前提を整えよう

  • 広告は送り出し側の記録

  • GAは受け取り側の記録

  • ズレて見えるのは、“視点が違う”だけ

数字の整合を取る前に、
まずは「どの視点で話しているか」を合わせる。
それが、正しいデータ理解の第一歩です。

 

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